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【雑記】平櫛田中《釣隠》との出会い。名古屋市美術館の常設展にて。

2019/06/17
 
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 GWの前半に、名古屋市美術館の特別展《石野石膏コレクション》を見ました。特別展のチケットで常設展も見ることができるのですが、その日は特別展の鑑賞で気力を使い果たし、また後日にしようと見ることなく帰りました。後日、名古屋市科学館のプラネタリウムを見たあと、常設展に立ち寄りました。正直に言えば、それほど期待はしていませんでした。
 常設展は、平日昼中ということで、人の数はまばらでした。しかも、その大半は 、おそらく特別展の《石野石膏コレクション》 を鑑賞してから来た人達です。特別展で気力を使い果たしてきたのでしょう。軽く流し見る人がほとんどでした。逆に、常設展のみの僕は、ひとつひとつの作品をじっくり思うままに鑑賞することができました。
 それほど期待せず見た常設展ですが、見ごたえのある作品も数多く展示されていました。過去の特別展で出会った作品にも、いくつか再会できました。その一つに、モディリアーニの《おさげ髪の少女》がありました。僕はこの作品が大好きで、これを見られただけでも、常設展に来て良かったと心から思いました。もったいないことに、この名画をじっくり鑑賞する人は見当たらず、逆に僕は、心ゆくまで眺めることができました。結果的に十分満足して、絵画の展示室を出ました。
 常設展の展示室は別にもうひとつあり、ついでにのぞきに行きました。それほど広くない展示室の中には何点かの木彫りの彫刻作品がゆったりとした配置で展示されていました。何の気なしに中に入り、右側のガラスケースに入った彫刻を見てみました。木彫りの老人が座って釣りをしています。 「おや?」作品を注視しました。「なに?これ。」 僕は、思わず、正面、斜め、上下左右、後ろ、ありとあらゆる角度から、この作品を舐め回すように眺めました。その表情や姿かたち、全体の佇まい。どこからどうみても、全く隙のない完璧と言ってもいい作品に感じました。すごい作品があるものだ…。周りに誰もいなければ、「すごい、すごい。」と心の中で感嘆しながら、一時間でも二時間でも眺め続けていたと思います。他の作品も軽く眺めた後、普段、そんなに人に話しかけることは無いのですが、思わずスタッフにこの作者(作品)に関するチラシがあるかどうか尋ねてしまいました。
 平櫛田中(ひらくしでんちゅう)作、《釣隠》(ちょういん)。彫刻に関しては全く無知で、ほとんど興味関心もないジャンルでしたが、本物は実際、目の当たりにすると衝撃です。ひと作品見ただけで、虜になりました。どこにどのような出会いが用意されているかは分かりません。いろんな場所に足は運んでみるものだと心から思いました。

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